「やさしく学ぶシリーズ」は前作の「よくわかるシリーズ」から進歩しているのか?参考書としての完成度をたまきが徹底分析しました。

電験三種やさしく学ぶシリーズの購入画像

オーム社ってどんな会社?

電気系参考書といえばオーム社、オーム社といえば電気系参考書というくらい、電気系の参考書につよい出版社です。電気書院とならび、文科省認定教科書も多数発行実績のある出版社です。

教材概要

まずは基礎知識から解説していき、例題を解くための知識を頭に叩き込みます。左側のコラムでは解くポイントや、必要な基礎を解説しています。

次に具体例として簡単な難易度の例題を解きます。例題を解くことで知識の定着をはかります。


最後に章末問題を解いて、実力を確認すると一つの章が終わるスタンダードな参考書です。

独自チェック項目

1.初学者向けの配慮はあるか?

【14/20点】
参考書というくくりの中では比較的初学者向けの参考書ではあると思います。多くの参考書で当たり前に使われている微分積分は本文中では出てきませんし、本文左側のミニコラムで初学者に対して補足する姿勢を感じました。

ただ、前作である「よくわかるシリーズ」と比べて大幅に分かりやすくなったか?と聞かれると簡単になったとは感じません。

基本的な知識(電気数学、物理の基礎)については身についていること前提の解説がされていると感じました。

2.無駄な説明がついていないか?

【16/20点】
章末のコラムで無駄とも言えるページの使い方をしていたのが気になりました。50HZ/60HZの違いの説明は良いのですが、過去の歴史がどうだったかなんて知らなくても合格できます。

電気技術者として必要なのは過去よりも現在の制度なのですから。参考書によっては「無駄コラム」が章ごとに毎回出てくる駄目参考書もあります。

比較すると、「やさしく学ぶシリーズ」については無駄なコラムは少ないほうだとは思います。しかし、合格に必要がない情報であればそもそも載せる必要はないのです。

また、合格するには理解する必要のない微分積分を使った解説がされているコラムも有り、無駄な部分だと感じました。本文中に載せないくらいなので、著者も微分積分は必要ないと感じているはずです。にもかかわらず、載せてしまうのでは意味がないと思います。

また、出題範囲を全部のせ(出題される可能性のある範囲については出題傾向に関係なく掲載するスタイル)になっている点も踏まえて減点させてもらいました。

3.ひと目で重要部分がわかる構造になっているか?

【15/20点】
重要な知識については枠で囲って解説している点は分かりやすくて評価できます。ただ、重要公式については黒い太字で記入していて重要だと分かるものの、枠で囲んでさらに太字で書くなど、分かりやすい表記がされていないので、微妙に分かりづらいです。

マーカーを引くなどすれば分かると思いますが、文字の太さが他と対して変わらないので、重要公式を見逃しやすい点が少し減点ポイントだと感じました。

4.合格できるだけの問題数があるか?

【11/20点】
前作に比べて問題数が増えたのは素晴らしいと思います。各章で3問程度だったのが、各章平均して8問程度になりましたし、章末問題も平均6問前後と大幅な改善がみられました。

ただ、合格できるかどうかと言われると、「徹底解説テキストシリーズ」や「徹底演習シリーズ」ほど問題数が多くはないため高い点数は付けられませんでした。

5.改訂は適切な間隔でされているか

【12/20点】
改訂はされています。過去の第一版が平成23年ですから大体7,8年に一度の改訂間隔です。もっと改訂間隔が広い参考書もありますが、出題傾向の反映という意味では、改訂数が十分とは言えないためこの点数にしました。

総合点数:68点

著者の早川氏による前作の参考書に比べて大幅な改善ができており、点数にも現れています。ただ、十分に参考書としての配慮が行われているかと言われれば、足りない部分も多いのでこの点数になりました。

教材名の長所と短所

メリット

  • 改訂2版であり定期的な改訂はされている
  • 重要知識は枠で囲っていて分かりやすい
  • 高度な数学を極力使わない姿勢は感じられる

デメリット

  • コラムにて合格に関係のない知識を載せている
  • 重要公式については分かりにくい表記である
  • 通信講座などと比べると改訂回数は少ない

総合評価

時間を掛けて実力を伸ばしていくなら、比較した参考書の中で最も「やさしく学ぶ」シリーズで学習するのも悪くはないかもしれません。しかし、参考書は膨大な試験範囲を全て掲載しており、「やさしく学ぶシリーズ」も例外ではありません。

改訂はしているといっても、7年以上改訂期間が空いてしまっています。少しずつ出題傾向が変化する電験三種ですから、参考書では学習分野を広くすることでしか対応できないのでしょう。

例題から少しずつ実力を伸ばしていくスタイルは多くの参考書も採用しており、実際いきなり問題を解き始める参考書もある中では「大きく外さない」参考書ではあるでしょう。

ただ、当ブログの方針である「最短合格」のために使えるかというと、微妙です。

掲載範囲が膨大であり合格まで時間が掛かりすぎるという点もあり、当ブログとしてはおすすめできません。