掲示板でも評価の高い完全マスターだが、受験者が合格するという目標に適したテキストなのか、現実を徹底レビューしてみます

完全マスターの参考書

オーム社ってどんな会社?

電気系参考書といえばオーム社、オーム社といえば電気系参考書というくらい、電気系の参考書につよい出版社です。電気書院とならび、文科省認定教科書も多数発行実績のある出版社です。

参考書概要

まず、基本事項の説明から入ります。多くの参考書が簡単な解説から始まるのに対し、できる限り高度な理論を使って抽象的な概念を解説しています。

そして例題で実力チェックです。例題の難易度は比較的高めの構成で、途中計算は基本的に高校数学の理解を前提としています。

最後に総仕上げの章末問題です。これは過去問の数値を少し変えたもので問題の難易度は過去問と同等となっています。

独自チェック項目

1.初学者向けの配慮はあるか?

【5/20点】
初学者向けではありません。まず、ベクトルなどの物理や高校数学についてはかなり理解していることを前提とした参考書になっています。電荷の説明ひとつにしても、抽象的な概念で難しい数式を使い、とっつきにくい解説をしています。

さらに図解に関しても、数は載っているものの、小さすぎて見にくいです。当たり前のように今まで参考書で扱っていなかった数学記号をいきなり使用する点もマイナスポイント。ようは、わかっている人向けの解説であり、一切初学者に向けての配慮はありません。

2.無駄な説明がついていないか?

【5/20点】
無駄な解説がとにかく多いです。完全マスターなので、あえて出題範囲の情報を全部乗せしているのだと思います。ただ、いたずらに解説を増やしても意味がありません。

特に目についたのは、指示計器についての項目。明らかに不要な数式を載せ過ぎです。電験3種では主に、計器別に用途や使用範囲、使用回路などの計器別に特徴の違いを問う問題が多い。

にもかかわらず、詳しく数式まで載せて、理解させる必要はなく、無駄な解説と説明が長く続きます。

このような解説は他にもあり、全体的に覚える必要のない、理解する必要のない範囲まで徹底的に載せているのが「完全マスターシリーズ」の大きな欠点と言えます。

3.ひと目で重要部分がわかる構造になっているか?

【14/20点】
これはいいですね。黒字でずらずら長文を並べているテキストも多い中で、公式を含め重要項目がひと目で分かるようになっています。

ただ、重要ではない電験3種を合格する上で必要のない公式や理論にまで色分けされている点はマイナスポイントです。

4.合格できるだけの問題数があるか?

【15/20点】
問題数は必要十分です。これさえ理解できれば合格するという問題数は載っています。一項目あたり、例題は5つ前後ありますし、章末問題は平均して10問を超える問題が掲載されています。ただ、章末問題では過去問からの転載が多く、本文の解説を読んだだけで問題を解けるとは到底思えない難易度となっています。

5.改訂は適切な間隔でされているか

【12/20点】
改訂1版が平成20年、改訂2版が平成26年。それを踏まえて考えると、およそ5年ごとに改定されるだろうと考えられます。意外と参考書としての歴史は浅く改訂回数は非常に少ないです。しかし、あまりにも網羅されすぎていることを考えると、改訂が少なくても許される唯一の参考書と言えるかもしれません。それが大きな弱点であることは言うまでもないですが。

総合点数:51点

参考書としては実力は低めです。掲示板等ではこれさえ完璧にすれば合格できるという話も出ています。確かに、電験3種の想定を大きく超えた学習範囲であり、これさえ完璧にできれば合格できるでしょう。しかし、図解の分かりにくさ、解説の難しさ・項目の順序など、問題点が多い参考書ですからこの点数になりました。

教材名の長所と短所

メリット

  • 図解の数は比較的多い
  • おおよそ電験3種の出題範囲は全て掲載
  • 電験2種を受ける人のステップアップとしては良い

デメリット

  • 図が細かく分かりにくい
  • 覚える必要のない範囲まで記載されている
  • 章末問題のレベルがいきなり上がり解けない可能性大

総合評価

私も電験3種の2年目受験時に使用したことのあるテキストです。電験3種の参考書の中では最も難しい部類になると思います。

完全マスターという名前の通り、電験3種の広い範囲について全てを載せようという方針のためか、合格するという目的から考えても無駄・無意味な解説が多いです。図解が豊富に含まれているのは評価できますが、その図解の中には電気数学をしっかりと理解していないと分からない電気記号・理論が使われています。

例題の数が多く、演習を中心に知識をみにつけようとさせる構成は良いものの、例題からすでに初学者がスムーズに解ける範囲を超えており、章末問題は過去問の引用であり、本番実践レベルの難易度のため、学習が詰まるのは目に見えています。

完全マスターの名に恥じない広範囲をカバーした参考書になっていますが、この参考書で電験3種の勉強を始めるのは全くおすすめできません。