受験者に圧倒的に支持され続けてきた売れ筋参考書は果たして現在どの立ち位置なのか?現在の状況に合わせたレビュー

これだけ理論の参考書

出版元の電気書院について

電気書院は言わずとしれた教科書の出版なども扱っている、電気系技術書の大手出版社です。電気系の学校を出ている人なら知らない人はいないというくらいに有名な会社です。

参考書の概要

まず、入門問題である「やさしい問題」の提示から始まります。そして、「要点」で重要知識の解説。

「詳しい解説」では問題を順に解いていきます。途中計算をなるべく省かない解説となっています。

「バイパス問題」では少し電験3種レベルに近い問題を出して、解説しています。

「ここは重要!」では、これだけは覚えておきたい重要項目について解説しています。
最後に実践レベルの問題を解いて項目は終了です。

独自チェック項目

1.初学者向けの配慮はあるか?

【15/20点】
配慮はされています。完全マスターのように理解の難しい分野からいきなり始まることはありません。あくまで最初は中学の物理でも勉強した直流回路の簡単な部分から始まるというのは、初めて電験3種を勉強する人にもよく配慮されていると感じました。

いきなり問題→解説と単調な構成ではなく、途中でバイパス解説などをはさみ、段階的に実力を伸ばしていける構成になっているのは良いですね。

ただ、一方で例えば過度現象の解説でラプラス変換を用いるなどの高度な数学を使って、無駄に難しく解説している点については他の参考書同様にマイナスポイントといえます。

2.無駄な説明がついていないか?

【14/20点】
初めて電験三種を勉強する人にもわかりやすいように、図解が多いのは良いと思います。覚える必要のない無駄な豆知識はあまり含まれていないのも高評価ですね。

しかし、不要な図も無駄に多いのが謎です。男がビーチで寝転がっている画像なんか、必要あるんでしょうか?

おそらく親しみやすさを与えたいという配慮でしょうが、正直言って合格には全く不要です。電験三種の内容と全く関係のない無駄な図が少なくないのがマイナスポイントです。

3.ひと目で重要部分がわかる構造になっているか?

【12/20点】
正直言って微妙です。確かに「ここは重要!」項目で記載してはいるものの、記載項目が少なすぎ&見にくいです。

せめて最初に要点で触れた重要項目の式や、内容についてはもう一度、「ここは重要」で触れておくべきだと感じます。テキスト本文もかろうじて、覚えるべき単語は色を変えて書かれていますが、重要公式については黒字でスルーしています。

教科書を扱っている会社だけに、最低限の配慮はされているものの、重要項目の拾い上げがもう一歩足りないという印象を受けました。

4.合格できるだけの問題数があるか?

【15/20点】
問題数は、やさしい問題・バイパス問題は各項目に1問ずつあります。明らかに演習量が必要な「テブナンの定理」の項目などでは3問程度しか演習問題が無いです。

その割に、出題も多くない電子回路の分野では1項目で7問あったりと、出題傾向を反映した問題数になっていない印象。

5.改訂は適切な間隔でされているか

【10/20点】
2005年に一度改定した後一度も改定されていません。出題傾向は毎年微妙に変化していますし、充分とは言い難いです。

総合点数:66点

これ以上ひどい参考書もいくらでもあるので、その中で65点という点数は悪くはないという印象です。ただ、「これだけシリーズ」が出版されてから、多くの参考書が出版されており、ベストとは言い難い現状が点数にも現れています。

教材名の長所と短所

メリット

  • 長年支持されてきたテキストで安心感がある
  • 簡単な問題から少しずつ実力を伸ばせる
  • 図解が豊富なので、勉強する抵抗が少ない

デメリット

  • 電験3種に関係のない無駄な絵が多い
  • 分野別に問題数のばらつきがある
  • 合格に不要な知識が解説されている

総合評価

王道テキストとして必ず挙げられるのが「こだだけシリーズ」です。支持されてきた理由はやはり解説の豊富さにあるでしょう。式の途中計算を省きがちな他の参考書と比べて、解説をなるべく飛ばさないように解説する姿勢が感じられます。

しかし、今現在は電験3種関連で多数の参考書が発刊されており、一番良い参考書とは言えないでしょう。偏った演習問題・重要項目の見にくさ・発刊時期の古さから考えて、これだけで合格とは言いにくい参考書となっています。

これだけ理論は、多くの受験者に支持されてきたテキストです。

しかしAmazon公式を見てみると分かる通り、現在は意外にも参考書としての評価は低く、星3つ程度の参考書です。やはり良くまとまっている参考書ではあるものの、出版からだいぶ年数が経っており、最新の傾向はつかめていない参考書だなと感じます。

さらに、微分積分の理解が当然となっていることで難しい参考書という印象は拭えません。通信講座であれば、これだけシリーズに記載されているような高度な数学を使わずに最短合格できます。

電験3種の受験におすすめの参考書とは言えません。