教科書を多数出版している実教出版が毎年出している徹底解説シリーズとはいかに。参考書としての実力を徹底解剖します

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実教出版ってどんな会社?

実教出版は技術系の教科書以外にも様々な参考書・教科書の出版を手がけている実力を持つ出版社です。こちらもオーム社や電気書院と同様、電気系の技術書にも力を入れている会社です。

参考書概要

最初に重要項目の解説が始まります。

そして比較的途中計算の掲載された例題の多さが特徴ですね。

最後に章末問題で実力を確認する構成になっています。

表紙に記載されたURLを入力して利用できる特設サイトでは過去問が見られるのは使用者にとってはありがたいポイントですね。

独自チェック項目

1.初学者向けの配慮はあるか?

【13/20点】
他の参考書と違うのは、基礎的な電気数学にもきちんと触れていること。

途中計算も省いている印象はあまりないです。例題に関しても「徹底解説」の名前のごとく、丁寧な解説がしっかりとされています。

しかし、章末問題となると本文中の丁寧さとは打って変わって別物の乱雑さになります。ほとんどの解説を3行程度で終わらせています。

問題を多く載せることを意識したためか、途中計算を省く・注釈をしないなど、不親切なつくりになっています。これでは初学者は解けずに分からない部分を量産してしまいます。

本来であれば章末問題のほうが難しいので、章末問題こそ丁寧な解説が望まれるのですが、この冊子ではあっさりとした回答しかありません。

「これだけシリーズ」ほどメジャーな参考書ではないので、知恵袋で質問をしても回答が来るかどうか怪しいです。

2.無駄な説明がついていないか?

【15/20点】
無駄な説明はあまりついていません。「完全マスター」や「これだけ」が合格に必要のない範囲をたっぷりと掲載している一方で、最小限必要な解説のみで済ませようとする意識は感じられます。

ただ、参考書特有の「知識の全部載せ」という傾向は他の参考書と全く変りません。

出題される可能性が少しでもある範囲は「出題傾向にかかわらず全て掲載する」という点が他の参考書と変わらないのは残念なポイントです。

3.ひと目で重要部分がわかる構造になっているか?

【16/20点】
これは良いですね。項目が始まる前に重要項目についてまとめているのが、分かりやすいですね。他の参考書と比較して、項目別に見やすいよう整理されているのは、さすが多くの教科書を手がけている実教出版ならではの分かりやすさかなと思います。

4.合格できるだけの問題数があるか?

【16/20点】
問題数は他の参考書と比較しても多いです。156問の章末問題に加えて、例題でも210問というのは参考書にしてはかなり頑張っているなという印象を受けます。

それだけに章末問題の解説が少なすぎる・薄すぎることで参考書としての評価を押し下げているのは勿体無いという印象ですね。

5.改訂は適切な間隔でされているか

【14/20点】
確かに改訂はされています。ただ、このテキストは毎年改定されていると言ってもほんの一部分だけで、9割は去年の冊子と内容がほとんど変わりません。厳しいことを言えばほとんど改定されていないのと一緒なので、通信講座の毎年改訂とは全く違います。

総合点数:75点

参考書の中では高評価の分類になると思います。ただ、依然として内容を見直すという意味での改訂はされておらず、とりあえず最新の参考書ということを示したいという目的で毎年、最新版という名目で出版しているという印象は拭えません。

全体的な構成は見やすいのですが、解説項目は出題範囲全般に渡っており、その点は他の参考書同様の欠点ですね。章末問題の解説の薄さはどうしても気になり、評価が低くなっています。

教材名の長所と短所

メリット

  • 教科書を多数手がけているので、構成が分かりやすい
  • 無駄な解説は他の参考書と比べて少ない
  • 特設サイトで過去問が見られる

デメリット

  • 覚えづらい語呂合わせが多くある
  • 出題傾向を反映しているとはいいがたい
  • 図が黒色が多めの印象があり、分かりづらい

総合評価

教科書を多く手がけていることもあってか、全体的な構成がすっきりしていて、ひと目で分かりやすい構成になっています。

ただ、一方で図などは、二色刷りにもかかわらず、黒色中心の構成で小さく見にくいです。

最初の方に重要項目について片面1ページに載せるなど工夫はみられます。しかし、章末問題では明らかに解説量が足りず、初学者や数学の苦手な人は解けるとは言えない解説の薄さが気になります。

他の参考書と比較すると、結構まともな参考書であるという印象を受けるものの、これだけを利用して電験3種に臨むのは危険です。途中計算がかなり飛ばされているなど、章末問題の解説については不親切です。勉強が行き詰まる可能性が高く、合格まで使いたい参考書とは言えない印象を受けました。

よって、電験3種の勉強におすすめとは言えません。