電験三種の参考書としては珍しいフルカラーの参考書「A to Z」シリーズの実力はいかに?同じく電気書院の「これだけシリーズ」を超えられるのか、たまきが徹底レビュー

電気書院ってどんな会社?

昭和8年3月創業の歴史ある企業です。工業高校生向けの教科書を発行している会社でもあるので、工業系の学校出身者はご存知の方も多いと思います。オーム社と並ぶ、電気関連図書の大手出版会社です。

教材概要

まず各章が始まる前に重要項目を確認しておこうというつくりは他の参考書と同様です。

本文中には右側には押さえておいたほうが良い知識が掲載されています。フルカラーテキストなので図もフルカラーです。

そして、最後に章末問題として「実力アップ問題」があります。

独自チェック項目

1.初学者向けの配慮はあるか?

【10/20点】
ページ右側のコラムや「パワーアップ」コラムなどを活用して初学者がなんとか解けるようにしようという配慮は感じます。

ただ、やはりといいますか。電験三種の参考書には恒例の微分積分等の高度な数学を使っての解説が普通に行われています。

また、まえがきで計算過程も記載があると書いてありますが、途中計算の省き方は他のいろんな参考書と比較してもひどいです。本文中も丁寧な解説がされているとは言いがたいのに、章末の「実力アップ」問題では普通に過去問レベルの問題が出題されています。これで解けるようになるわけがないです。

解答についても、複雑な分数の途中式からイキナリ解答に結びつけるなど、解説が少なく狭いです。問題を解くにはデメリットが非常に多く、初学者や数学の苦手な人にとって辛い参考書です。

2.無駄な説明がついていないか?

【10/20点】
難しいテキストにありがちな、電験2種につっこんだ内容などはありません。過度現象などは、電験三種レベルでは一切必要のないラプラス変換のコラムなどが掲載されています。

また、フルカラーなのに図の使い方が下手くそです。

せっかくフルカラーなのだから電気回路図などは大きく表記すればよいのに、かなり図が小さいです。

一方で勉強に全く関係なく、明らかに不要な図がでかでかと挿入されています。画像の写真はまだマシな方で、ひどくなると電験に全く関係ない図が紙面を大きく割き掲載されています。図は載せればそれで良いというものではありません。

無駄な図の乱用は「これだけシリーズ」にも似ており、独特の分かりにくさがあります。しかも、「これだけ」と違い二色刷りではないので、無駄な図が余計に勉強の邪魔に感じます。

3.ひと目で重要部分がわかる構造になっているか?

【15/20点】

本文中にもフルカラーを生かして重要公式や単語には赤文字を使うなどの工夫が見られます。
各章の始まりごとに重要項目を確認する「この章の重要事項チェック」があるのは良いですね。特別なまとめ項目がない参考書も普通にあるので、まとめを確認しやすいのは素敵ポイントです。

ただ、そのまとめ項目は50ページあたり1ページしかないので、正直足りないですね。

4.合格できるだけの問題数があるか?

【11/20点】
問題数ははっきりいって少ないです。本文中には例題がなく、章末問題も各章に5問前後しかなく、過去問を解けるだけの実力を身につけることはできません。

さらに問題の解説も少なく、実際に勉強を進めて、問題を解く際にはつまずくことも十分ありえます。問題数をみても、解説の不十分さを見ても、問題を解いて実力をつけようというテキストではないです。

5.改訂は適切な間隔でされているか

【9/20点】
2011年に一度改訂されています。しかし、現在では十年近く経っており、最新の傾向を反映できていません。正直これで勉強するには不安が残ります。

総合点数:55点

確かにフルカラーの参考書は見やすいですが、図の使い方が悪く、フルカラーのメリットを活かしきれていません。合格に不要な表記が多く、問題の解答の質も悪いので総合的な点数は低くなりました。

教材名の長所と短所

メリット

  • 参考書としては珍しくフルカラーである
  • 初学者のためにコラムなどが充実している
  • 図を多く使っている

デメリット

  • 基礎的な電気数学についての解説は一切なく、高度な数学も使われている
  • 電気回路などの重要な図は小さく載せている
  • 勉強に不要な無駄な図が多い

総合評価

電験三種は理解しなけばならない項目が多数あり、重要項目を各章の最初にまとめているのは評価すべきポイントです。

参考書としては珍しいフルカラーテキストは二色刷りのテキストに比べても非常に分かりやすくなっています。

全編フルカラーであるという点については通信講座のSATの「パーフェクト講座」にも通じるものがあります。

しかし、テキストの構成を見ると、フルカラーの利点を使いこなしているとは言えません。不要な図が多い割に、重要であるはずの電気回路図については非常に小さく分かりづらい載せ方をしています。

また、重要項目のまとめが少なく、電気数学の基本的な知識については理解していることが前提であり、初学者向けのテキストではありません。

どうしても合格したい人が使うテキストとしては、実力が不十分でありおすすめできません。