大手出版社とは異なる切り口の参考書は電験三種に「これ一冊」で合格できるだけの実力があるのか?詳細を徹底的にレビューしました。

これ一冊で電験三種に合格する本の表紙

JMAMってどんな団体?

JMAMは正式名称を「日本能率協会マネジメントセンター」といいます。参考書を手がけている団体は書籍の出版しか行っていないことが多いですが、JMAMは人材育成なども業務として行っているようです。

教材概要

独自チェック項目

1.初学者向けの配慮はあるか?

【7/20点】
初学者には配慮されているようで配慮されていません。少なくとも目次には、初学者のための電気数学を学ぶ章があります。ただ、電気数学を学ぶための章は十数ページのみで、例題などもほぼありません。

例題については、問題を解くためのヒントを順番に並べるなどの配慮はされているようです。ただ、解説を中途半端にしているので理解が難しく、問題をしっかり理解することは難しいと感じました。

電気数学の章も、丁寧に解説しているわけではありません。合格に必要だから載せるというだけで、「とりあえず載せているだけ」という印象があります。

あと、106ページの記載については、読者に喧嘩を売っているとしか思えません。解法を示した上で、自分で解いてくれと言えば済む話だと思います。

参考書を読んでいる読者に失礼のある表記は避けるべきだと思います。解法を示せないなら何のための参考書なのでしょうか?

最初から、「自分で答えを導き出せ」といったような放置スタイルの参考書ならともかく、60%で最小限の努力で合格させる方針の参考書ですよね?であるならば、解法くらいは記載するべきでしょう。

これでは学習者はげんなりしてしまいます。なにせ喧嘩を売られるわけですから。ありえないです。

2.無駄な説明がついていないか?

【12/20点】
語呂合わせの弱点は自分で考えたものでないと少しも頭に残らないことです。

うまい語呂合わせであれば多少覚えることができますが、この参考書の語呂合わせは上手とはいえません。覚えにくい語呂合わせはかえって勉強の邪魔です。下手でも自分で頭をひねって考えた語呂合わせのほうが何倍も記憶に残ります。

また、電験三種についての知識(受験前・合格後)について触れられているのは良いですが、少し紙面を割きすぎだと思います。

通信講座でそれが許されているのは、あくまでもテキストは別に存在しているからです。参考書の場合200ページ程度の中に問題や知識を記載しているわけですから、無駄な知識がありすぎるのは問題です。

お説教なのか、解説なのか分からない文章が多いのも微妙なポイントです。

3.ひと目で重要部分がわかる構造になっているか?

【8/20点】
図も細かく、公式は各節の冒頭にまとめて記載されているのは良いですが、強調されているわけでもありません。単純に並べただけで見にくく、分かりにくいです。

全体的に一色の参考書なので、図・文章いずれも黒一色の分かりにくい構成になっています。

4.合格できるだけの問題数があるか?

【5/20点】
各節に例題が2,3問程度で、章末問題もなく全体的な問題数は少ないです。正直に行って、これ一冊では演習量が全く足りないと感じます。

5.改訂は適切な間隔でされているか

【8/20点】
初版が2012年ですが、以降は一切改訂されていないです。「60%合格のために」と表紙にありますが、コンパクトにするなら出題傾向を正確に反映していないと話になりません。

総合点数:40点

参考書として必要なものを備えていないという印象が強いです。無味乾燥なテキストよりは著者の顔が見えるのですが、参考書としての実力はいまいちという結果になりました。

教材名の長所と短所

メリット

  • 独特の語り口で著者の顔が見える
  • 電気数学の基礎は一応触れている
  • 電験合格後の知識についての記載もある

デメリット

  • 全体的に解説にばらつきがある
  • 黒一色で図が小さくみにくい
  • 説教じみた解説がある章が存在する

総合評価

電気回路の合成抵抗などは、親しみやすい解説と解き方手順などで分かりやすいと感じました。

ただ、全体的に著者のクセが強く、しっかり解説する節もあれば、突き放すような解説もあります。

著者の感性に頼っているのか、解説の詳しさが各節でばらついており、不親切だと感じました。

また、出題傾向によって解説に差があるというわけではなく、あくまでも著者の考えに沿っているというものです。

単調に解説している参考書よりは、親しみが持てる分面白くはあるのですが、面白いことと合格に有用なのかはまた別の話です。

語呂合わせに関しても、無理やりと感じるものが紙面を使って大きく記載されており、本文中の図解や解説を短くしてまで強調する必要があるのかも疑問です。

改訂間隔が比較的狭いわけでもないので、出題傾向も反映されているはずもなく60%合格というのは誇大広告に近いという感じがします。シリーズが「理論」と「機械」科目しか出ていないという点も微妙です。

各評価項目の点数から見ても、この参考書の使用をおすすめすることはできません。